ロストワックス法という加工方法は鋳造という金属加工の中で、ロウで作った型の表面にセラミックなどでコーティングし、その後にロウを溶かして取り除き鋳型を作りだすもので、どんな形でも作りだすことができ、薄いものや、3次元の立体的なもの、表面が曲線を描くものまで作ることができる精密な加工方法の一つです。
多くの部品を溶接でつなぎ合わせて形作るのと違い、型にチタンを流し込み作り上げるので接合面がなく、一体的な表面や曲面を得ることができます。チタンは1キロ2,000円ほどする非常に高価な金属ですが、チタン材をブロック状のものから切削加工する必要がないため材料の大幅な削減につながり、コストダウンが可能となります。
溶接部分がないので強度があがり、さらに鋳肌の金属組織が緻密で美しく低コストでの量産も可能です。
動く部分についてもチタンの使用量が減ることで軽量化が図られ、いらない慣性力をなくせて耐久性が増します。
チタンは耐食性、耐熱性、高強度など大変優れていますが、チタンの切削加工時には熱がこもり工具の摩耗が激しく、チタン自体も大きく変形しやすく薄物加工では加工精度の低下などを招きます。
しかしロストワックス法のチタン薄物加工(最小肉厚0.6mm)では切削加工ではないため薄物でも鋳造が可能です。
又高圧縮処理により内部欠損を大幅に減らすことが出来ます。
チタンはチタン合金も含めて大気の中で溶かすと空気中の酸素、水素、窒素などの気体がチタンに溶け込んでしまい、鋳造し温度が下がり固まるときに気泡がそのまま内部に残って欠陥品となりますが、真空溶解炉で溶かせば回避できる場合があります。
真空状態を作るのに多少時間がかかったり鋳型の温度管理が難しくなったりしますが、精密さを要求する製品造りには素材も製法も最適といえます。
加えて、チタン自体の特性がアルミニウムより重く強度がありさらに、抗菌作用があり磁気をおびていないなど大変魅力的な金属です。
チタンロストワックス精密鋳造では切削などの機械加工では不可能な複雑で立体曲面を持つ形にも対応でき、自由でユニークな発想のもとで金属加工が設計できます。
ゴルフクラブのヘッドや産業用部品おいて多くの実績があります。
人間と生体適合性が優れているチタンは金属アレルギーを起こさず、硬く、めったに錆びないので丈夫であるため、人間と接触するものに広く加工されています。
また高強度であるため航空宇宙分野ではジェットエンジン部品、機体部品、ロケット、人工衛星、ミサイルなどの部品、具体的にはコンプレッサー、ディスク、ファンケース、ファンブレード、スタブシャフト、フラップなどに及びます。
その他輸送機器の分野では自動車部品(四輪車、二輪車)船用部品、鉄道などにも使われています。
チタン製品例:ゴルフクラブのヘッド
チタン製品例:印鑑の印材
身近なチタン製品 | 人工関節、ステント(体内埋設器具)、時計、盃、ぐい呑み、歯科材料のインプラント、楽器のマウスピース |
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建築、土木分野では屋根、ビルの外装、橋梁、海底トンネル、民生品では通信分野、光学機器、音響機器、医療分野では体内に埋設するペースメーカーなどにも利用されています。電力、原子力、火力、地熱発電、蒸発式海水淡水化プラントなどの配管、熱交換器、構造部材、インバーター容器、石油精製、投げ込み式熱交換器、核燃料の再処理、廃棄物処理、濃縮などにかかわる製品にも力を発揮しています。スポーツレジャーの分野でも私たちの生活のありとあらゆる面でもチタンの特性を生かした製品が作られています。
船舶、航空、宇宙関係の機器には耐久性、耐蝕性、軽量で立体的な流線型の形に添った部品の製造が求められています。
原子力発電の部品などでは厳しい品質管理基準を満たした発電用タービンブレードなどの曲面を持つ複雑な形にも対応しています。
医療機器では耐久性もさることながら人体の内部に設置するため、表面の清潔さ滑らかさ精密さが求められペースメーカー、人工関節、ステントなどの製品があります。
またスポーツではゴルフクラブのヘッドやテニスのラケットにも使われています。
純チタンにはJIS1種、JIS2種、JIS3種、JIS4種などがあり、JIS1種が最も柔らかくダンダンと硬くなっていき、純度も一番高く数字が大きくなるにつれて酸素、窒素、炭素、鉄、水素などの不純物が混じっていきます。チタンの強度と加工性からJIS2種が国内ではよく利用されています。
チタン合金は用途や加工性などに応じてチタンの機械的性質を変えるために作られました。
高強度、耐熱性、加工性、生体適合性、耐クリープ性、耐キズ付き性、溶接性、耐熱性などに適したチタン合金ができあがりました。
チタン合金には通称6-4合金と呼ばれるJIS60種、通称3―2―5合金と呼ばれるJIS61種があります。
15-3-3-3合金や耐食系合金のJIS11種、パラ入りチタン合金といわれるJIS12種などがあります。
チタンの金属組織はα相(稠密六方晶)とβ相(体心立法晶)の2種類があり、常温での純チタンはα相、6-4合金はα相、β相両方持つα-β合金で、15-3-3-3合金はβ相を持つ準安定のβ合金で、Near α合金もあります。
チタンの物理的性質 | 性質 | 純チタン | チタン合金 Ti-6Al-4V |
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溶融点℃ | 1,668 | 1,540~1,650 | |
密度g/cm³ | 4.51 | 4.43 | |
原子番号 | 22 | - | |
電気比抵抗(μΩ-m,20℃) | 0.55 | 1.702 | |
電気伝導率(%,Cuと比較して) | 3.1 | 1.0 | |
線膨張係数 (/K) | 8.4 | 8.8 | |
比熱(J/kg.k) | 0.519 | 0.585 | |
透磁率 | 1.0001 | - | |
ヤング率(Gpa) | 106.3 | 113.2 |
チタンの材質 | 性質 | 純チタン | チタン合金 Ti-6Al-4V |
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耐力(N/mm²) | 277 | 909 | |
引張強さ(N/mm²) | 393 | 999 | |
伸び(%) | 39 | 18 | |
硬さ(HV) | 140 | 310 | |
比強度(引張強さ/密度) | 87.1 | 225.5 |
チタン(チタニウム)はアルミニウムのように軽くて、鉄のように丈夫で、ステンレスのように耐食性にすぐれ、鋼のような強度を持ち合わせています。
生体適合性は群を抜いて高く経年劣化がほとんど見られず、リサイクルがしやすい金属として注目を浴びています。
非磁性であり、精密機器、電子機器の製作に適し、放射性半減期が短いので原子力廃棄物処理、再処理装置などに適しています。
チタンの応用範囲は鉄、ステンレスの分野を全て凌駕しています。
ステンレスは耐食性をあげるため鉄におおよそ10.5%以上のCr(クロム)を含有させた合金のことで錆びにくくなり、さらにニッケルも含ませて錆びにくさを追求したステンレスは18-8ステンレスと呼ばれています。
鉄の18%量のクロムと8%量のニッケルを加えた合金です。
クロムとニッケルの量が鉄内に占める割合が増えると錆びにくくなり高価になります。
熱伝導率が低く焦げ付きやすく、酸アルカリには比較的強く、衝撃にも耐えられますが、重たく油ノリが悪いといった面もあります。
アルミ(アルミニウム)は軽く、低温に強く-162℃のLNGガスのタンクとして使われています。
電気をよく通し高電圧送電線の99%に採用されエネルギー分野の利用が飛躍的に伸び、純度の高いアルミは赤外線、紫外線、電磁波を反射します。
錆び腐食を事前に防ぎ空気中で酸化皮膜(アルマイト)を生じさせるので鉄のように錆びません。
毒性がないので薬のパッケージ、飲料缶、医療機器、家庭用器物に広く使われ、鉄やチタンに比べ低い温度で溶けるので鋳造しやすいため、いろいろな分野で幅広く使われています。
アルミを加工すれば強さが増し、航空機、大型構造物の材料として注目をあびています。
磁気を帯びないので計測機器や電子医療機器などに用途が広がっていて、またリサイクルも容易で省エネ、省資源に貢献しています。
鉄は強い磁性を持ち、そのため屑鉄になっても再利用しやすいといった特徴があります。
鉄だけで使われることは少なく、鉄鋼にしていろいろな分野で使われています。
物質の性質 | 性質 | 純チタン | アルミニウム | 鉄 | ステンレス |
---|---|---|---|---|---|
溶融点℃ | 1668 | 660 | 1530 | 1450 | |
密度g/cm³ | 4.50 | 2.70 | 7.87 | 7.70~7.98 | |
ヤング率(GPa) | 105 | 62 | 200 | - | |
電気抵抗(nΩ.m) | 420 | 28.1 | 97.1 | 72 | |
熱伝導率[W/(m.K)] | 14.99 | 243 | 80.4 | 16.2 | |
線膨張係数[μm/(m.K)] | 8.4±0.15 | 23.6 | 11.7 | 17.2 | |
比熱(J/kg/K) | 523 | 900 | 460 | 500 | |
磁化率(/kg) | 180×10-6 | 0.65×10-6 | 強磁性体 | 弱磁性体 | |
1㎏取引単価(約) | 2000円前後 | 249円前後 | 22円前後 | 135円前後 |
ヤング率とは、ものを引っ張ったときの伸びと力の関係を表す定数で、たわみ剛性ともいいます。
比熱は1gあたりの物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量。
強磁性体は、強い磁性を持ち磁場の方向に強く磁化される物質。
1.ワックスを注入
金型にワックスを注入し模型を精密に作ります。
2.ツリー組立
ワックスでできた模型をツリー状に組み立てます。
3.コーティング
ワックスでできたツリー状模型の周りをセラミックなどの耐火物でコーティングします。量産の場合は機械で、小ロットの場合は手作業で、ツリー状模型に被膜(コーティング)、乾燥を繰り返し行いコーティング層を分厚くします。
4.ワックス除去
セラミック鋳型の中のワックスを高温で取り除きます。
5.鋳型焼成
鋳型に強度を与えるために焼成します。
6.チタンの流し込み
焼成して強度の増した鋳型に溶かしたチタンを流し込みます。
7.鋳型の粉砕
チタンが冷めて固まったら鋳型を壊し、中からツリー状の製品を取り出します。
8.パーツ切断
ツリー状のパーツを切断します。
9.熱処理
歪み取りなどの機械的性質向上のため熱処理を行います。
10.仕上げ
チタンの注入口の仕上げなどを行います。
11.検査
外観寸法検査のほか必要に応じて成分分析、X線検査などの検査を行います。